締付けによって六角穴付き特殊ボルトに生じる引張る力と締め付け対象物に生じている圧縮力が一体化しており、通常釣り合っています。
しかし振動や外圧がかかったりすることでその力は低下します。このような場合の軸力の低下を“ゆるみ”といいます。六角穴付き特殊ボルトのゆるみは、その性質上重要な部分に使われていることが多く、しばしば大事故につながることもあります。
六角穴付き特殊ボルトのゆるみ止めは研究されてはいますが、いまだにその構造が解明されていないこともあり、完全に対応できる対処法があるわけではありません。
六角穴付き特殊ボルトのゆるみは、大きく分けてねじが回転してゆるむ回転ゆるみと、回転しないでゆるむ非回転ゆるみとに大別できます。
六角穴付き特殊ボルトの初期ゆるみ
六角穴付き特殊ボルトの締め付け対象物の接合部分における表面粗さ、うねり、形状誤差によるへたりは締付けの際にほぼ完了しますが、振動や圧力などの外圧によってある程度進行し停止します。これを初期ゆるみと言います。
この初期ゆるみを見込んで六角穴付き特殊ボルトを使用する際の設計を行うことになります。
六角穴付き特殊ボルトの陥没ゆるみ
六角穴付き特殊ボルトを締付ける際、ボルト座面が当たる締め付け対象物がボルトヘッドの形で陥没することがあります。
更に外圧も重なり変形が進行するとボルトが回転しないで軸力が低下し、ゆるみを生じる現象を陥没ゆるみと言います。
これは六角穴付き特殊ボルトの強度が締め付け対象物の強度より大きい場合に起こります。
高強度の六角穴付き特殊ボルトを採用したとしても、この場合はボルトの性能を使い切れていないことになりますので、設計の際に考慮する必要があります。
六角穴付き特殊ボルトの回転ゆるみ
六角穴付き特殊ボルトに振動や衝撃などで外圧が作用しボルトが戻り回転して発生するゆるみを回転ゆるみと言います。
締め付け対象物へ作用する荷重によってゆるみ程度がかわります。締め付け対象物に作用する荷重として、ボルト軸方向つまり引張荷重を受ける場合と、ねじり荷重を受ける場合、そしてボルト軸直角方向つまりせん断荷重を受ける場合の3種類あります。
一般的な防止方法としては、ボルト軸力を大きくする。ボルトの本数を増やす。外力を小さくする設計をする。ボルトを細く長くする。ゆるみ止め部品を使用するなどの対策があります。
ゆるみに関して、特にせん断方向に繰返し外力がかかる場合が最もゆるみに直結します。対策の1つとして様々なゆるみ止め部品が存在し、六角穴付き特殊ボルトの戻り回転を防止するものから、六角穴付き特殊ボルトの脱落だけを防止するもの、初期ゆるみだけの対策部品など様々なタイプが存在します。